DN_MAFCD2の利用法について
先週「DN_MAFM2の活用について」を投稿したところ予想以上に反応が良かったため、引き続いてDN_MAFCD2の利用方法について解説したいと思います。
株価等の値動きには上下に振れながら進む性質があり、ほとんどの場合一定の箇所にとどまる事がありません。そして大抵は現在の基準となる株価等を中心として上下に振れます。この基準となる株価等が全体的に上昇していれば上昇トレンドにある、下降していれば下降トレンドにあるといった表現をします。
たとえばUSDJPYが108.50を指していますが、なにかの事情により107.50まで円高に振れざるを得ない事情があったとします。多くの場合一直線に107.50まで下落するのではなく、ある程度下げては少し戻してを繰り返しながら目標値付近までたどり着きます。そして107.50を付ける直前にすこしだけ行きすぎて、たとえば107.30まで振れたあとで107.60に戻してから107.40に下げて・・・といった具合に徐々に目標値である107.50に収束して行きますが、もちろん107.50でピタリと停まることはまずありません。そうこうしているうちに、新しい価格の目標値が出てきて、旧い目標値に一度も落ち着くことなく新たな目標値に対してまた同様の動きを繰り返して向かいます。これが延々と続いているのが値動きです。
私が開発するダニエルツールスで、モメンタムインディケーターのDN_MAFM2は、この目標値の方向「トレンド」と強さ「モメンタム」を分析し、また今回解説している移動平均乖離予測のインディケーター「DN_MAFCD2」は、その振幅の分析を目標として開発されています。
先に触れたとおり株価等はかならず振り子のように上下に振幅しながら時間軸を進む性質があります。ときおり大きな波が発生した場合は、行きすぎて戻りつつ目的の値に収束します。これをオーバーシュートと呼んでおり、MAFCD2はこのオーバーシュートを比較的正確に分析できる機能を持ちます。オーバーシュートについてはマニュアルの「オーバーシュートについて」をご覧ください。
では以下のチャートをご覧ください。
このチャートは2020年4月29日13:00時点での日経225CFDの5分足チャートで、以下のパラメーターによりMAFM2、MAFCD2を動作させたものです。
DN_MAFM2のパラメーター
DN_MAFCD2のパラメーター
ではチャートに注目してみます。
上段のMAFM2では29日の01:45(日本時間の07:45)にモメンタムリボンがねじれてシグナルが点灯し上昇トレンド入りしています。この同一時間帯に下段のMAFCD2でもシグナルが点灯していますが、こちらが下へのオーバーシュートで底打ちして反発した事を示しています。
そして04:35にいったん上昇しきって上へのオーバーシュートとなって調整入り、05:55に再びMAFM2のシグナルが点灯して上昇トレンドを再開しており、やはり同一時間帯にMAFCD2でも下のオーバーシュートが発生して反発しています。
MAFCD2の白い点線はボラティリティバンドと呼ばれており、該当時間帯の振幅量の目安を標準偏差で求めたものです。これを抜けた場合は「行きすぎ(オーバーシュート)」の状態にあると判断し、戻りだしたあたりでシグナルが点灯するように設計されています。
シグナルが点灯していない小さい振幅についても、先に解説した様にトレンドに伴う小さい上げ下げをMAFCD2が検知して描いているのです。
いかがですか?冒頭で解説したとおりに動いていませんか?そしてこのトレンドとモメンタムと振れ幅、そして現在の値がどの過程にいるのかを把握することができれば、あとは適切なタイミングで適切な方向にポジションを取るだけです。
そしてMAFM2、MAFCD2はそれらを分析するために必要な指標をチャート上に描きだす機能を持ちます。しかし実際にに運用してみて気づくと思いますが、インディケータ、シグナルともに新しい値がつく度に書き換えられることがあります。
なぜならMAFM2、MAFCD2共に中央あたりにある赤い縦線「予測境界」より右側に表示されるシグナルやラインは予測値であり、その後の値が動くことにより再計算して描き直します。またシグナルに関しては比較的慎重に判定しているため点灯した際にはすでにトレンドが完成しているなどもあります。
マニュアルにも記載してあるとおりMAFM2、MAFCD2のシグナルは売買シグナルではなく、トレンドの転換点、オーバーシュートの発生があったことを示す目安です。またこれから発生するであろうそれらの変化を予測してシグナルが点灯することがありますが、こちらを参考にトレードしたとしても必ずしも上手く行くとは限りません。
ただし予測境界より左側で確定したシグナルは比較的正確なため、現在大きいトレンドが発生しているなら素直にシグナルに従うのも良いかもしれません。その場合は、例えば5分足、15分足、30分足でそれぞれトレンドの向きやシグナルの点灯のしかた等を参考にして判断すると良いでしょう。いわゆる「マルチタイムフレーム」と呼ばれる手法です。
さて、上記の例であれば今まさにMAFCD2が上にオーバーシュートしそうな雰囲気を見せています。同様にMAFM2でもこの先にリボンのねじれが発生して下向きに変わりそうな気配を見せています。ここでショートポジションを作るのは一つの戦略です。ただし注意なければならないのは、全体的に上トレンドの最中である点です。
15分足チャートでも確認してみましょう。
MAFM2のモメンタムリボンはねじれて下げ始めそうですし、緑色の先行線との関係で現在陽転サイクルの半分を消化していますので、ここから先は現在のサイクルは終了に向かって動きます。もちろん次に再度陽転サイクルが発生するかもしれませんので注意は必要です。
そしてMAFCD2では11:00頃にシグナルは点灯していないもののオーバーシュート気味に天井を打って下がった後に上とも下とも方向性の出ない、いわゆる揉み合いの状態です。この時注意すべきなのはMAFCD2では下げているのに、実際の値動きが停まっているか、またはわずかに上昇している点です。11:00でシグナルが点灯しなかったのはまさしくこれが原因で、値動きは上昇しすぎてはいるがオーバーシュートでは無い状態であり、値が下がる可能性が低いことを示しています。
ただし現在が揉み合いとはいえ、良く観察すると現時点では収縮したボラティリティバンドを上にオーバーして下がり初めており、値もモメンタムリボンを割りそうですので、揉み合いがあったが少なくとも現時点は下げている状態と判断できます。
先の時点でショートポジションを建てたなら、この動きを慎重に観察しつつMAFM2、MAFCD2で反転しそうな兆候が見えたらただちに手仕舞いするなどが良いかと思いますし、マルチタイムフレームでシグナルが点灯するのを見届けてからトレンドに乗る方が安全性が高いでしょう。
このようにしてMAFM2、MAFCD2を運用することを想定しています。実際にトレードに用いるならロスカットが必須であることはもちろんです。
MAFCD2とチャートの相関
ここで先のチャートからMAFM2を消し、これまたダニエルツールスのDN_MAFを用いて移動平均線を描いてみましょう。白い線が24本線、緑色は6本線で、それぞれMAFCD2の「BASE Term」と「MAFCD Term」に対応しています。
白の24本線がMAFCD2のゼロ基準線、緑の6本線はMAFCD2の緑のMAFCDラインを示すことになります。移動平均線を観察してみると24本線は上昇したのち水平方向の動きに入っており、6本線は上に行きすぎて戻りで24本線を下抜いています。この動きをわかりやすいように相関性だけを抜き出してMAFCD2は描き出します。
上記のチャートをよく眺めると一目瞭然で、トレンドは上昇からおだやかにボックス入りしており、実際の値動きは上昇しすぎたために修正に入っている状態で、まさしく冒頭で解説したように白い24本線に値が収束する過程にある事を示します。
このことからMAFCD2が単純に上下を表しているのでは無いことが解るかと思います。MAFCD2はあくまで長期移動平均線に対して短期の動きがどういった状態であるのかを分析するためのインディケーターであり、決して上昇、下降を示すシグナルではありません。
この点を理解できるとおそらくまた新しい視点が開けるのでは無いかと思います。MAFCD2自体は他のMAFM2やトレンドを分析できるインディケーターと組み合わせることで重要な値の変化点を把握し、トレードの際の参考指標とするのが正しい使い方です。
MAFCD2の時間補正
MAFM2でも時間補正について解説したとおり、MAFCD2でも時間補正を標準で行っており「Use centering ?」に「OFF」を指定することでこれを解除することが可能です。
MAFCD2だけ上記の15分足チャートの時間補正を解除しました。
まったく違ったチャートになることが解ることでしょう。もともとMAFCD2が参考にしたMACDは、長短の移動平均線の相関性を分析することにより、現在の値動きが長期線から離れる過程にあるのか「拡散」、近づく過程にあるのか「収束」を分析するために開発されています。上記チャートはそのMACDに似た処理により描かれた結果となります。MAFCD2では単純移動平均線を用いていますので厳密にMACDと同じにはなりませんが似たような動きになります。
そして予測境界線が最後のローソク足の位置を示している点に注目してください。MAFCD2の特徴である少しだけ未来の値を予測している箇所が解ると思います。
この時間補正についても、ダニエルツールスの開発コンセプトである「移動平均線を正しい値を知る」からは外れるのですが、使う方によっては解除した方が相性の良い場合もあるかもしれませんので、お好みで選択してもらえると良いと思います。
ダニエルツールスは比較的単純な設計ですが、開発してる本人もまだ発見していないようなさまざまな使い方があると思いますので、皆さんでいろいろと応用していただければと思います。